なぜポテトチップスは「白黒」になったのか。プラフィルムを減らさずインクを削った、アルミ蒸着包装の品質ファーストな設計ロジック

サステナビリティ
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ポテチが色を失った日

2026年5月、カルビーのポテトチップスなどのパッケージが「白黒の2色印刷」に変更され、店頭で大きな話題を呼んでいます。「石油原料節約パッケージ」と銘打たれたこの取り組みですが、なぜプラスチックの袋そのものではなく、インクが削られたのでしょうか。

カルビーからの発表によると、中東情勢の緊迫化に伴う一部原材料の調達不安定化を受け、商品の安定供給を再優先とする観点から、当面の対応策として一部商品のパッケージの見直しをする、としています。

そしてその対象が、「「ポテトチップス」、「かっぱえびせん」、「フルグラ」の印刷インクを従来使用から2色(白黒)にする」というものでした。

https://www.calbee.co.jp/news/pdf/4227-34957.pdf

しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。

「ナフサの供給不安で資源節約を言うなら、

インクより圧倒的に量の多いプラスチックフィルム自体を減らすべきでは?」

実は、このあえて「インクから変えた」という決断の裏には、製品を守るために必要な包装の重要性と、企業がサステナビリティへの取り組みをアピールしたいという意図がうかがえます。

なぜ「プラフィルム」ではなく「インク」から変えたのか?

「プラスチックの量を減らした方が、環境へのインパクトは大きいはず」

確かにその通りで、ポテチのパッケージを構成する材料のほとんどはプラスチックフィルムです。

ではなぜフィルムではなく、まずインクが変更されたのか。理由は大きく3つあります。

① フィルムは複数の層で構成され、内容物を保護している

ポテトチップスを透明でバリア性のない袋に入れると、以下のXポストのように光・酸素・水蒸気の影響で急激に酸化が進行してしまいます。1か月後なんて見ていられないですね・・

賞味期限の長期化は、「アルミ蒸着フィルム」というバリア性のあるフィルムが可能にしています。

これはお菓子業界初の取り組みだったようですが、窒素置換と組み合わせることで賞味期限が6か月つけられるようになったそうです。

賞味期限の延長は、在庫を最適化して食品ロスを削減するために大きく貢献する素晴らしい取り組みですね。

https://note.calbee.jp/n/nf53677d175ce

アルミ蒸着フィルムとは?

アルミ蒸着フィルムとはどのようなフィルムでしょうか?

実は複数の種類の層でできたフィルムで、中心にPETへアルミを蒸発させながら吹きつけられた層が挟まっています。アルミに近いバリア性を持つこのアルミ蒸着PETが、内容物保護性能のカギとなっています。

【ポテトチップスの袋の一般的な層構成(イメージ)】

アルミ蒸着PET以外のOPP、CPP層も、それぞれに「内容物保護」「密封性の確保」という重要な役割があります。

ちなみに、図にあるPE(ポリエチレン)は、それぞれの機能性フィルムを貼り合わせるための接着層(ラミネート)としての役割を担っています

もし、これらフィルムの素材や厚みを安易に変更すると、上記Xポストの画像のような「中身が数日で湿気る」「油が酸化して味が落ちる」といった品質の致命傷に直結する可能性があります。

変更前後で品質に影響がないかを評価(長期の保存試験など)するためには、膨大な時間を要するのです。

② インクの変更は「品質への影響」が最小限で済む

一方で、パッケージの印刷はどうでしょうか。

もちろんインクもナフサ由来の貴重な資源ですが、色数を5色から2色に減らしたとしても、袋の内側にあるアルミ蒸着層やフィルムのバリア性能には影響しません。

もちろんインクのにじみや、印刷適正に影響が出る可能性はゼロではありませんが、パッケージの見た目由来のクレームのリスクをとってポテトチップスの品質・安定供給を優先したということです。

つまり、インクの変更は「品質を落とさずに、今すぐ実行できる最速のナフサ由来資源の節約」だったのです。

この圧倒的なスピード感こそが、インクから着手した最大の理由であると考えらえれます。

③ 見た目に現れる「企業のイメージ戦略」

もう一つ、マーケティング的な側面も見逃せません。

フィルムを裏側でこっそり数ミクロン薄くしたり、構成を変更したとしても消費者には気づかれません。

しかし、パッケージの見た目がガラリと「白黒」に変われば、嫌でも目に入ります。現にXでもバズっていますよね。

「私たちは今、中東情勢の伴う世界的な資源危機に対して、デザインを変えてまでいち早くナフサ節約に取り組んでいます」という姿勢がダイレクトに伝わるため、

企業のイメージ向上や、消費者への啓発という攻めの要素も含まれていたと考えられます(個人の見解です)。

まとめ:限られた資源の中で「品質」と「見た目」をどう両立するか

今回のポテトチップスの減色は、製品のサステナブルな変更アピールの側面も否定できませんが、主には「中身の品質保持(バリア性)」を最優先に守りつつ、ひっ迫するのサプライチェーンの中で最速で実行できる調達戦略だったと言えます。

プラフィルムの多層構造を変えるには膨大な検証時間が必要ですが、インクであれば品質を落とさずに変更ができる。この「変えられる部分から合理的に変えていく」という姿勢は、他業界に対しても重要なヒントになるはずです。

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